どうも、合同会社スタジオパッチ代表の池本です。
今日は「案件のリアル:見積もりと価格の決め方」についてお話しします。
本日も結論からいきましょう。
価格は絵の枚数ではなく、工程の数で決まります。
ここを間違えると、作る方も頼む方も損をします。
よくある依頼のされ方
キャラクターデザインの依頼はだいたいこう来ます。
「マスコットキャラクター、1体でいくらですか」。
シンプルな質問ですが、これに一発で答えるのは実はけっこう危ういです。
なぜなら「1体」の中身が、依頼ごとに全然違うからです。
ラフを3案出すのか1案なのか。
修正は何回までか。
権利は買い取りなのか使用許諾なのか。
グッズ化やSNS運用まで見据えているのか。
これらを聞かずに金額だけ決めると、後で必ずズレが起きます。
その依頼に潜む不安
頼む側は「相場が分からない」という不安を抱えています。
安すぎたら失礼な気がするし、高すぎたら断られる気がする。
作る側も同じです。
「これくらいで大丈夫かな」と手探りで数字を出す人、正直多いです。
そして一度安く受けてしまうと、次からもその金額が基準になります。
そのうち「あの人はこの値段でやってくれる人」という値札が貼られてしまう。
ここに気づかないまま、何年も消耗している作り手をよく見かけます。
見積もりは工程の見取り図
ボクが見積もりを作るときにまずやるのは、金額を考えることではありません。
工程を洗い出すことです。
ヒアリング、ラフ、清書、修正、納品データの整理、権利の範囲の確認。
これを全部書き出してから、それぞれに時間と難易度を当てはめます。
見積書は「絵の値段」ではなく「工程の設計図」なんです。
根拠は3つあります。
リサーチの工程
ピクサーは車のキャラクターを作るとき、実際に本物の車をオフィスに並べて観察したそうです。
ルート66まで走りに行ったという話もあります。
リアルの裏付けがあるから、ファンタジーが成立する。
これはキャラクターデザインでも同じで、依頼主の事業やターゲットを知る時間がないと、見た目だけの薄いキャラクターになります。
「とりあえずかわいくお願いします」で始まった案件ほど、後から「なんか違う」が出やすいです。
リサーチの時間は、見えないけれど確実にコストです。
修正と権利の工程
修正回数は口約束にしないほうがいいです。
「あと1回だけ」がズルズル続いて、気づいたら5回目、という話は珍しくありません。
ここで大事なのが権利の範囲です。
著作権を譲渡するのか、使用許諾なのかで、値段の考え方はまったく変わります。
ディズニーは自社キャラクターの権利を他社に握られた過去があり、そこから権利設計を徹底するようになりました。
権利をどこまで渡すかは、金額に直結する話です。
ここを曖昧にしたまま「安くしてくれてありがとう」で終わらせると、後で「これ、グッズに使っていいんですか」というやりとりが必ず発生します。
展開の工程
キャラクターは作って終わりではなく、そこから育てるものです。
SNS運用、グッズ展開、着ぐるみ化。
展開の幅が広いほど、最初の設計に求められる強度は上がります。
ディズニーの構造がまさにこれで、質の高いキャラクターがファンを生み、映画・グッズ・パークへと広がり、その利益がまた次の質に還元される。
最初の1体をどこまで見据えて作るかで、見積もりの中身は変わってきます。
「とりあえず1体だけ」の依頼でも、将来展開の可能性があるなら、それも含めて話しておくべきです。
もう一度、結論
見積もりは絵の値段ではなく、工程の値段です。
リサーチ、修正と権利、展開の見込み。
この3つを言葉にして初めて、金額に根拠が生まれます。
「高い」「安い」で揉めるのは、たいてい工程が見えていないからです。
作る側も頼む側も、まず工程を並べてみる。
そこから話を始めるだけで、ずいぶんすれ違いは減ると思っています。
というわけで、実験は続きます。
では。
合同会社スタジオパッチ
代表 池本将

